町田市の団地再生 現状と課題
町田市の団地再生は、2012年に策定された10ヵ年の長期計画である「まちだ未来づくりプラン」の重要な5つの計画「未来づくりプロジェクト」の一つとして「団地再生に向けたプロジェクト」が掲げられ、2013年3月、町田市内の団地・団地周辺を含めたまちの活性化を実現し、20 年後の住宅都市町田の目指すべき方向性を示す「町田市団地再生基本方針」が策定されました。その背景には、住宅都市として町田を支えてきた団地が、徐々に衰退することによる市全体の活力低下の懸念があります。
2003年には、当時の町田市内総人口の約13%、5万人の市民が団地に居住していましたが、現在では3万5,000人程度となり、総人口の8%程度となっています。その推移を見てみると、東京都住宅供給公社の団地で2003年が20,016人、2009年が18,125人、そして、2018年1月現在では15,579人まで低下しています。また、UR都市機構の団地においては、2003年29,245人が住んでいましたが、2009年には24,421人、そして2018年の1月現在では19,465人となっています。居住者の年齢構成を見ますと、65歳以上が町田市全体では25%なのに対して、団地居住者は既に35%を超えています。さらに、5歳未満は市全体で13%なのに対し、団地では10%を大きく下回っています。町田市の平均値と比較して年少人口の割合は低く、高齢化が顕著です。
団地再生の対象となっている団地はUR都市機構と東京都住宅供給公社が供給している100 戸以上かつ複数の棟からなる大規模な団地で、12団地あります。UR都市機構の団地は、藤の台団地、町田山崎団地、山崎第二団地、鶴川団地、小山田桜台団地。東京都住宅供給公社の団地は、森野住宅、本町田住宅、高ヶ坂住宅、町田木曽住宅、木曽住宅、境川住宅、真光寺住宅です。
町田市団地再生基本方針では、5つの再生手法を示しています。(1)駅前生活拠点を創造するための再生手法、(2)団地センターを核として地域拠点、住環境を強化するための再生手法、(3)地域コミュニティーを生かした安心居住を推進するための再生手法、(4)住環境を保全するための再生手法、(5)住宅需要の変化に対応した団地再生を進めるための再生手法です。それぞれの立地や規模などを考慮して分類すると、(1)森野住宅・境川団地、(2)鶴川団地・木曽山崎団地地区・藤の台団地、(3)本町田住宅・高ヶ坂住宅、(4)真光寺住宅・小山田桜台団地と分類はできますが、実際には単純に実現出来るものではありません。
12団地のうち現在までに進んでいるのは、鶴川団地、木曽山崎団地地区4団地、藤の台団地の計6団地です。
鶴川団地では、「鶴川団地の団地再生に向けた地域検討会」を設置し検討を重ねてきました。地域検討会は、2013年度から2015年度の3年間で計12回の会議及び計3回のワークショップを実施し、「町田市鶴川団地と周辺地区再生方針」が策定されました。この間、鶴川団地ボックス住棟リノベーションプロジェクトが実施され、センター街区にある4棟の建て替えを含む、同団地のストック再生・改善事業が決定しました。2016年11月30日に鶴川団地と周辺地区における多世代が一緒に住める街の実現に向けた覚書を締結し、2017年10月から鶴川団地に生活支援アドバイザーを配置しています。
木曽山崎団地地区では、2015年10月に旧本町田西小学校及び旧本町田中学校跡地活用にかかわる基本協定書を桜美林学園と締結し、2016年6月に第1回連絡協議会を開催、2017年6月に第2回連絡協議会を開催しました。旧本町田西小学校及び旧本町田中学校跡地に桜美林学園の教育・文化交流施設が設置されることになり、2020年4月のキャンパス開設に向けて進められています。桜美林学園とUR都市機構は、UR所有の東京都町田市内にある団地活性化の推進等について、相互に連携協力を図りながら推進することに合意し、協定を締結しました。
藤の台団地の団地再生は、2016年から自治会・住宅管理組合・ショッピングセンターにヒアリングを行い、3者と市との意見交換会を実施しました。UR都市機構が賃貸団地のストック活用方針を示しましたが、藤の台団地はハード面の整備を予定していないため団地再生が難しい状況にあります。現在は、機運向上・担い手探しのため、活性化に関するワークショップ「ふじずかん」を実施中です。
また、森野住宅は団地再生としては進められてはいませんが、「中心市街地まちづくり計画」の中で、10のプロジェクトの1つとして設定され、今後、建て替えられる可能性が高くなっています。
時代の変化とともに団地を取り巻く状況も変わっています。時代の変化に対応しつつ、地域とともに歩み続ける団地再生を目指して参ります。