新公会計制度の現状と課題
町田市では2012年4月に全国の市区町村で初めて企業会計方式(複式簿記・発生主義)による新公会計制度を導入しました。導入から5年が経過し、庁内において複式簿記・発生主義の考え方が定着したように思います。
ここで単式簿記・現金主義会計と複式簿記・発生主義会計の違いについて確認したいと思います。単式簿記は、家庭でつける家計簿を想像して下さい。きゅうりを買いました。100円です。トマトを買いました。300円です。というように、現金の動きをそのままつけるオーソドックスな会計です。しかし、きゅうりやトマトはすぐに使い切ってしまいますが、車の場合はどうでしょうか。車は使い切ってしまうものではないので、10年使えるとすれば、1年使っても、翌年9年分の価値が残ります。単式簿記ではこの価値が見えません。現金主義会計と発生主義会計の違いは、クレジットカード利用がわかりやすいと思います。クレジットカードで洋服を買った際、現金の動きはありません。しかし、クレジットカードで買った段階で取引は成立しています。発生主義会計では期間内の会計の動きをより正確に把握できます。今までの自治体の会計では把握できなかった価値や時期を、より正確に把握できるようにしたものが新公会計制度です。
新公会計制度は「企業会計」ですから、企業であれば当然に行っている会計制度を市で行うということです。しかし、企業と自治体では大きな違いがあります。企業は損益分岐点という明確な基準があります。プラスであれば黒字企業となり、マイナスであれば赤字企業となります。しかし、自治体が行う事業で黒字になるものはほとんどありません。企業の損益分岐点にあたるものが、新公会計制度では、当期収支差額という呼び名に変わります。当期収支差額が1億3,000万円の赤字になっている事業の場合、これがもともと1億4,000万円くらいの赤字になる予定だったが、ここまでよくなったという判断なのか、1億2,000万円くらいの予定だったけれども、予想以上にかかってしまったのか、今の仕組みだとその指標がわからないのです。 続く